保育士の声
嶋田篤也さん/保育士 、臨床美術士3級
幼少期に、「作る」という本来人間が持っているものを刺激してあげることが
子どもの成長につながる
以前に勤めていた保育園では、子どもの日やクリスマス、卒園といった季節の行事に関するアート制作のほか、日常的に制作の時間を組み込んでいました。そこに臨床美術のエッセンスや鑑賞会、アートコミュニケーションを織り交ぜていったことで、チャレンジする気持ちや自己肯定感、他者を認めることを子どもたちが自然と身につけていったように思います。
例えば共同制作をすると、そこに役割分担が生まれ、友達と協力することを覚えます。相手のやりたいことを感じながら作っていくんですね。また、年少さんが、年長さんを見て新しいやり方を覚えて、回を重ねるごとに表現がどんどん変わっていく。新しいことにチャレンジするんですね。失敗してもいいんですよね。そうやってチャレンジと失敗を繰り返すことが、アート以外の「運動」や「生活発表」など他の分野での成長にもつながっています。
また、アートに親しんでいるクラスで特徴的なのが、ケンカがものすごく少ないことです。もちろん言い合いをすることはありますが、手は出ない。まず相手の思いを聞こうとするんですね。イライラしているのは分かるけど、最後まで聞こうとする姿勢がある。それは鑑賞会や制作の中で、お互いを認め合う、思い合うことからきているのだと思います。
保育の世界では、「五領域」という指針(保育所や幼稚園での教育目標や保育を行う際の視点を表わしたもの。健康、人間関係、環境、言葉、表現の5つ)があります。子どもたちと継続してアート制作をする中で、創作活動をすること、クリエイティブな生活を送ることで、これらすべてが網羅できるんじゃないかと気付いたんです。
「作る」という、本来人間が持っているものを刺激してあげること、それを唯一数字などで評価されない幼少期に行うことが、子どもたちの成長にとても大事なのだと思います。