体験された
みなさまの声

卒業生の声

浜野良太さん/株式会社博報堂


子どもの頃、造形教室で答えがないものに対して向かっているとワクワクしていました。
それが大人になって、「企画をする」という仕事に活きています。

3歳くらいから中学まで、浦和造形研究所(臨床美術を開発した故・金子健二氏が始めたアート教室)に通い、金子先生や蜂谷先生の授業を受けていました。絵や造形が上手に創造できたとは思っていませんでしたが、毎週、ワクワクしながら教室に通っていました。

現在は広告代理店で企画営業の仕事をしています。広告会社の仕事というものには、業界の商慣習など、一定のルールなどがあり、そのルールに則りながら、「答え」を導き出していきます。しかし、元来、新しい発想をすることが体に染み付いている私にとって、そういう既定路線で企画をするのは、あまりワクワクしないんですね。誰も考えたことのないような、見たことないような企画、もっといろいろなステークホルダーを組み合わせた楽しい展開ができるのではないかと考えます。

私がこういう発想をするのは、子どもの頃に通った造形研究所の影響が大きいと思います。作品を作る過程で、上手に作ることよりも新しい発想を褒めてもらったこと。今で言う「ゼロイチ」(0から1を創り出す力)ですよね。その時の腹の底からワクワクし、全身からアドレナリンが出る感じ。評価されるためにやるのではなく自分が楽しいと思ったことに向かって突き進む感覚。それらの経験が活きていて、既成概念や過去のルールに囚われずに発想することができるのです。答えが決まってない仕事をやりたいというワクワクする気持ちは、あの頃と一緒です。

もちろん答えが決まっていないのですからうまくいかず、失敗も多いですが、私はあまり失敗だと思っていない。レジリエンス(回復力)ということが昨今よく言われますが、失敗してもこれをきっかけにもっといい方向に行くかもしれないと思えるし、新しいことをやるのが楽しいんです。

こういう感覚は、学校教育で教えることは難しいのではないかと思っています。でも、今の時代、自分で答えを作っていく能力がものすごく求められています。特に社会に出てから、より必要とされると思います。私にとってはその発想の原点にあるのが、造形研究所での経験、その背景にある臨床美術の考え方だったのだと思っています。